大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和27年(う)306号 判決

原判決は挙示の各証拠を綜合し、「被告人は、原審相被告人高業順と共謀の上、昭和二十七年四月十一日午後一時四十分頃富山県婦負郡八幡村草島地内富山港導流堤堤外地に於て、運輸省第一港湾建設部富山港工事事務所工事係長大井煥二の管理に係る右建設部所有の繋船浮標用鉄鎖約三米、重量五十貫位(時価九万九千円相当)を切断窃取したものである。」旨の事実を認定し、該所為に対し刑法第二百三十五条第六十条を適用し処断したものであることが明かである。しかしながら、原審並に当審に於ける証拠調の全結果を綜合すれば被告人は原判示の日時、原判示の場所に於て、高業順と共に流木、屑鉄等を蒐集中、原判示繋船浮標鉄鎖(杭に連結され大部分砂中に埋没し、先端約一米に相当する部分のみが地上に露出して居たもの)の存在を認め、当初は無主物であると思惟し、砂中よりこれを堀起すに及んで、該鎖が何等かの施設に固定してあるものであることを知り、同時に該鎖が他人の所有に帰属するものであることを明白に認識するに至つたにも拘らず、偶々四囲に人影を認めなかつたため、これを適当個所より切断し窃取せんと決意するに至り、茲に前記高業順と犯意を共通し、所携の鑢を使用し其の末端より約三米の部分に於て該鎖を切断したものであつたこと、斯の如くにして鎖を切断して見たものの、該切断部分の重量は約五十貫匁に達し、これを運搬することは一見して容易でなかつたのみならず、折柄約三百米を距てた対岸に於て、被告人等の行動を監視しているかの如き人影の動きがあり、且つ対岸より現場に向け、一艘の小舟が進行して来るのを認めたので、被告人等は犯罪の発覚せんことを恐れ、敍上の如く鎖を切断したに止り、いまだもつて、其の所在を移動するに至らず、勿論、これをリヤカーに積載する等の行為により、該鎖を自己の占有下に移すこともなく、其の儘再び砂をかぶせて原状に復し、直ちに同所を立去つたものであつたこと、すなわち前敍被告人の所為は窃盗の犯意をもつてその実行に着手した後障碍に遭遇して未遂に終つたものであつたことを認定するに十分である。そうして見れば、被告人の敍上所為をもつて窃盗の既遂と認定し、これに刑法第二百三十五条を適用した原判決は、証拠の判断を誤つて事実を誤認したものでなければ、法令の解釈を誤つて刑法第二百四十三条の適用を遺脱したものであり、その誤りは判決に影響するから論旨は理由があり、原判決はこの点に於て破棄を免れないものである。

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